2025.06.26
マダニ咬傷について
季節的にマダニが活発になる時期になり、マダニに噛まれて当院を受診される患者さんが増えてきました。
最近テレビなどマスコミで報道されておりますように、マダニに刺されると重篤な感染症を合併してしまう場合があり、注意が必要です。今回はマダニ咬傷について解説します。
マダニ咬傷について
●マダニとは?
マダニは、屋外の草むらや森林などに生息する小さな節足動物で、吸血性の寄生虫です。主に春から秋にかけて活動が活発になり、人や動物の皮膚に咬みついて血を吸います。マダニ咬傷は、かゆみや赤みだけでなく、まれに感染症を引き起こす可能性があるため、適切な対処が重要です。
●マダニに咬まれた時の症状
マダニに咬まれた場合、以下のような症状が現れることがあります:
• 咬傷部位の症状:赤み、かゆみ、軽い腫れ、または小さな硬いしこり。
• その他の症状:まれに発熱、倦怠感、リンパ節の腫れなどが現れる場合があります。
• 重篤なケース:マダニが媒介する感染症(例:ライム病、日本紅斑熱、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)など)により、発疹、関節痛、高熱、消化器症状(吐き気、下痢)などが生じる場合があります。
注意:咬傷部位にマダニの頭部が残っている場合や、発熱、発疹、強い倦怠感などの全身症状が現れた場合は、早めに医療機関を受診してください。
●マダニ咬傷の対処法
1. マダニの除去:
• マダニがまだ皮膚に付着している場合、マダニを無理に引っ張って取ったり、潰したりすることは避けましょう。マダニの口器の部分が皮膚の中に遺残してしまう危険性や、マダニの体液が感染症(SFTSを含む)の原因となる場合があります。
• マダニが皮膚に付着している場合には、皮膚科を受診してマダニを除去してもらいましょう。
上図)人間の皮膚の内部にマダニの口器が残存してしまっている病理組織所見
2. 咬傷部位の洗浄:
• 石けんと水で咬傷部位をよく洗い、清潔に保ちます。
3. マダニ咬傷後の注意点:
• 咬傷部位が赤く腫れたり、発熱、発疹、消化器症状が現れたりした場合は、SFTSを含む感染症の可能性があるため、すぐに医療機関を受診してください。
●マダニ咬傷を防ぐために
• 服装:野外活動時には長袖、長ズボン、帽子を着用し、肌の露出を減らしましょう。明るい色の服はマダニを見つけやすくなります。
• 虫よけ剤:DEETを含む虫よけスプレーを使用してください。
• 環境整備:自宅の庭やペットの散歩コースでは、草を短く刈るなどマダニの生息環境を減らす工夫。
• ペットのチェック:ペットにもマダニが付くことがあるため、散歩後はペットの毛並みを確認しマダニが付着していないか確認しましょう。
●当クリニックでの対応
当クリニックでは、マダニ咬傷時のマダニ除去を行っております。マダニが体に付着している場合には、早めに受診してください。
●よくある質問
Q:マダニ咬傷は必ず危険ですか?
A:多くの場合、適切に処置すれば問題ありません。ただし、頻度は低いもののSFTSを含む重篤な感染症のリスクがあるため、異常を感じたら早めに医療機関を受診してください。
Q:マダニを自分で取っても大丈夫ですか?
A:ピンセットを使って慎重に除去すれば問題がない場合もありますが、不適切な除去を行うとマダニの口器が皮膚の中に遺残してしまう危険性があります。ご不安な場合は皮膚科を受診された方がよろしいかと思います。